とびひを治すためには、とびひに効果的な治療薬が欠かせません。
ただ、とびひの治療薬には色々な種類のものがあるため、何を使えば良いのか分からないという人も多いのではないでしょうか?
ネット上では、とびひが悪化するといった風な書き方をされている治療薬もありますし、処方薬とはいえ効果がどうなのかも気になりますよね。
そこで今回は、とびひに効く処方薬や市販薬の中でも、医療職の目線から本当に良いと感じたものをまとめてみました。
とびひに効く治療薬の中でも、特によく使われている薬を中心にご紹介していきますので、この記事を読めば、とびひの薬について一通り理解出来るでしょう。
とびひの治療薬は飲み薬と塗り薬の2種類
とびひの治療というのは、簡単に言ってしまえばとびひの原因菌(黄色ブドウ球菌や溶連菌)を薬で殺菌する治療です。
この原因菌を殺菌するために使われるのが「抗生物質」を含むお薬ですね。分かりやすく言えば、細菌に対する特効薬です。
抗生物質を含むお薬は、一般的には「抗生剤」や「抗菌剤」と呼ばれるもので、大まかに分けると飲み薬と塗り薬があります。
軽い症状であれば塗り薬だけを使うということもありますが、基本的には飲み薬と塗り薬を合わせて使っていくような形になりますね。
とびひでよく処方される2種類の飲み薬(内服薬)
とびひの治療のメインとなるのは、抗生物質の飲み薬です。とびひでよく使われる飲み薬は、主に以下の2つですね。
- セフェム系抗菌薬
- ペニシリン系抗菌薬
聞きなれない名前かと思いますので、1つずつ説明していきましょう。
1.セフェム系抗菌薬
とびひには、水疱が出来るタイプと、厚いかさぶたが出来るタイプの2種類があります。セフェム系抗菌剤は、そのどちらのタイプにも効果が期待できる抗生物質ですね。
簡単に説明すると、細菌の持つ細胞壁という防御壁を壊すことで、細菌を生きられなくする効果のある薬です。
とびひには最もよく使われる飲み薬で、病院でも効果が出ている例の多い、比較的一般的なお薬と言えますね。
副作用は時々下痢がある程度で、その他に目立った副作用はほとんどありません。飲み薬としては安全性の高いものになっていると言えるでしょう。
- ケフラール
- プロモックス
- セフゾン
2.ペニシリン系抗菌薬
ペニシリン系の抗菌薬は、特に厚いかさぶたが出来るタイプのとびひに効果的な抗生物質です。セフェム系と同じで、細菌の細胞壁を壊すことで殺菌をするタイプのお薬ですね。
一般的な水疱が出来るタイプのとびひにも効果はあるのですが、ペニシリンに対して耐性を持っている菌が増えているので、以前ほどは使われなくなりました。
副作用は、基本的にはセフェム系と似ていて、下痢をすることが多いですね。
ただ、ペニシリン系の抗生物質は時々体に合わないケースがあり、人によってはアレルギーを引き起こす場合があるので注意をしておきましょう。
セフェム系に比べると少し安全性は落ちますが、ペニシリン系も基本的には安全性の高いお薬です。
- サワシリン
- パセトシン
とびひでよく処方される2種類の塗り薬(外用薬)
とびひで処方される塗り薬も、飲み薬と同じく抗生物質が含まれるものが中心です。とびひでよく使われる塗り薬は、以下の2つですね。
- 抗菌薬入りの塗り薬(ゲンタシン、アクアチム、フジシンレオなど)
- ステロイド入りの塗り薬(リンデロンVG、ロコイド、キンダベートなど)
1.抗菌薬入りの塗り薬
とびひの原因菌となる黄色ブドウ球菌や溶連菌を、皮膚の表面から殺菌するお薬です。飲み薬と同じように、抗生物質が主成分になっています。
病院では、ゲンタシン軟膏やアクアチム軟膏、フジシンレオ軟膏といった、軟膏タイプの塗り薬が処方されることが多いですね。
ゲンタシン軟膏
ゲンタシン軟膏は、「ゲンタマイシン硫酸塩」という抗生物質が主成分の軟膏です。とびひに効果的な薬として、以前からよく使われている塗り薬ですね。
使い勝手が良く、抗菌薬の中でも特によくお目にかかる一般的な薬の1つなので、とびひに限らず一度は処方されたことのある方も多いのではないでしょうか。
ただ、よく使われていたこともあり、現在ではゲンタマイシンに耐性を持つ細菌(耐性菌)が多くなっています。つまり、ゲンタシン軟膏が効かないとびひが増えてきているんですね。
既にとびひの50%以上には効果が出ないと言われており、とびひに効果はあるものの、人によって効く、効かないの差が激しい薬と言えるでしょう。
アクアチム軟膏
アクアチム軟膏は、「ナジフロキサシン」という抗生物質を主成分とする軟膏です。ニキビの治療薬として有名なアクアチムクリームの軟膏タイプですね。
ゲンタシン軟膏が効かないタイプのとびひにも効果があることが多く、最近はよくとびひに処方されるようになりました。
アクアチム軟膏の特徴は2つあります。1つは、とびひの原因で特に多い黄色ブドウ球菌への効果が、ゲンタシン軟膏に比べると高いことですね。
そしてもう1つは、軟膏の粘度がとても高いことです。ゲンタシン軟膏は汗などで流れ落ちてしまいがちなのですが、アクアチム軟膏は流れ落ちることがありません。
とびひのジュクジュクとした傷口にも使いやすいので、とびひに対しては使いやすい塗り薬と言えるでしょう。
フシジンレオ軟膏
フジシンレオ軟膏は、抗生物質の「フジシン酸」が主成分となっている軟膏です。あまり頻繁に処方されるお薬ではないので、知らない方も多いのではないかと思います。
とびひの原因となる黄色ブドウ球菌の増殖を抑える作用がとても強いことから、とびひではよく使われる塗り薬の1つですね。
フジシンレオ軟膏の特徴は、比較的ブドウ球菌に特化した効能であることです。汎用性はあまり高くない薬なのですが、とびひに対しては高い効果を発揮するお薬と言えるでしょう。
また、医師から見ると、余計な耐性菌を作りにくいという特徴もあります。
ゲンタシン軟膏でも軽く説明したように、抗生物質は使い続けると、菌が耐性を持ってしまうことが少なくありません。
しかし、フジシンレオ軟膏は効果が特化している分、余計な他の菌に作用しません。つまり、余計な耐性菌を作りにくいというわけですね。
2.ステロイド入りの塗り薬
とびひでかゆみなどの症状が強く出ている時には、抗生物質に加えてステロイドが含まれている塗り薬を処方される場合もあります。
抗菌薬の殺菌作用に加えて、皮膚のかゆみや炎症を抑える効果も期待できるお薬ですね。殺菌も出来るかゆみ止めといったイメージで良いでしょう。
とひびでは、リンデロンVG軟膏、ベトネベートN軟膏といった、軟膏タイプのものがよく処方されます。
リンデロンVG軟膏
リンデロンVG軟膏は、「ゲンタマイシン硫酸塩」という抗生物質に加えて、「ベタメタゾン吉草酸エステル」というステロイドが含まれた軟膏です。
つまり、ゲンタシン軟膏にステロイドをプラスしたようなお薬と考えておけば良いでしょう。一般的によく処方される塗り薬なので、一度は見たことがある方も多いのではないでしょうか。
リンデロンVG軟膏のステロイドの強さは5段階中の3番目です。処方される薬の中では比較的効き目の強いステロイドですね。
炎症が強い時に効果的なことから、とびひでは、かゆみがひどい時や炎症が強い時に処方されることの多いお薬です。掻きむしってしまう時などに効果的と言えますね。
ただ、ゲンタシン軟膏と同じく耐性菌が増えてきているため、使い方を間違えると症状を悪化させてしまう可能性もあるお薬です。
使う場合には専門的な知識が必要なので、自宅にリンデロンVG軟膏がある場合も、自己判断で使うのは止めておきましょう。必ず担当の医師に相談するようにしてください。
参考:『リンデロンVG軟膏の効果まとめ!同じ効能の市販薬はある?』
ベトネベートN軟膏
ベトネベートN軟膏は、「フラジオマイシン硫酸塩」という抗生物質と、「ベタメタゾン吉草酸エステル」を配合した軟膏です。
基本的には、リンデロンVG軟膏とよく似ている塗り薬ですね。ステロイドはリンデロンVG軟膏と同じものが使われており、こちらも炎症に強い薬となっています。
ベトネベートN軟膏の特徴は、リンデロンVG軟膏とは違う抗生剤が使われている点ですね。
リンデロンVG軟膏に使われているゲンタマイシン硫酸塩は、先ほどもお伝えした通り耐性菌が多いお薬です。「耐性菌が多い=効果が出ない可能性が高い」というイメージですね。
つまり、リンデロンVG軟膏を出したいけど、効果が出にくいゲンタマイシンは使いたくない場合に、ベトネベートN軟膏が処方されることが多いと言えるでしょう。
とびひにリンデロンなどのステロイドは危険?
よく、「ステロイドは副作用で免疫力が落ちるからとびひにはNG」ということが書かれていると思うのですが、これは半分正解で半分間違いです。
まず、ステロイドの副作用で免疫が落ちるというのは事実です。そのため、細菌感染が原因となるとびひでは、ステロイドがNGというのも間違いではありません。
ただ、これはあくまでステロイドを単体で使った場合の話です。というのも、免疫力低下による菌の増殖のリスクは、抗生物質を合わせて使うことでカバー出来るからですね。
そのため、とびひでステロイド剤が出る時には、ほぼ確実に抗生物質が合わせて付いて来ているはずです。
例えば、リンデロンVG軟膏やベトネベートN軟膏は、ステロイドに抗生物質が含まれた塗り薬ですから、軽いとびひなどでは単体で処方される場合があります。
ロコイド軟膏やキンダベート軟膏といったステロイドの塗り薬は、飲み物の抗生物質と合わせて処方されるのが一般的ですね。
つまり、とびひでも抗生物質と合わせてステロイドが処方されることは十分に考えられます。使い方を間違えなければ安全に使うことが出来ますので、医師の指示に従うようにしましょう。
ただ、医師がステロイドを処方する際には、耐性菌のことまで考えた上で判断をしています。とびひの際に、自己判断でステロイドを使うのが危険なことには変わりありませんので、その点は注意しておきましょう。
軽いとびひの症状におすすめの市販薬2選
ここまでは処方薬についてご紹介してきましたが、ここからはとびひにおすすめの市販薬をご紹介したいと思います。
とびひは基本的に病院で治した方が良い病気です。
ただ、軽いとびひの場合には市販薬で治ることもありますので、すぐに病院に行けない場合や、さほど症状がひどくない時には、市販薬を試してみるのも良いでしょう。
テラマイシン軟膏
テラマイシン軟膏は、「オキシテトラサイクリン塩酸塩」と「ポリミキシンB硫酸塩」という、2種類の抗生物質を主成分とする市販の抗菌薬です。
2種類の抗生物質が、細菌の繁殖を抑制しつつ殺菌も同時に行ってくれるため、細菌感染が原因となるとびひには効果・効能のあるお薬と言えるでしょう。
テラマイシン軟膏の特徴は、何といっても有効成分同士が合わさることで、細菌に対する高い治療効果をもたらしている点ですね。
とびひに限らず幅広い細菌に効果があり、主に皮膚が化膿するような症状に効果が期待出来ます。
ステロイドの含まれていない塗り薬なので、副作用をほとんど気にすることなく使うことが出来ますよ。また、年齢に関係なく乳幼児から使うことも可能です。
ただ、ただれがひどい部位や、ジュクジュクした部位、目の周りなどには使用出来ませんので、その点は注意をしておきましょう。
ドルマイシン軟膏
ドルマイシン軟膏は、「コリスチン硫酸塩」と「バシトラシン」という2つの抗生物質を主成分とする市販の抗菌薬です。
テラマイシン軟膏と同じく2種類の抗生物質が含まれているため、とびひを含む様々な細菌感染に使えるお薬となっています。
テラマイシンに比べると効果がとても幅広いのが特徴で、湿疹や皮膚炎、虫刺され、傷ややけどの化膿予防などにも使うことが出来るので、自宅に1つあると何かと便利ですね。
ステロイドが含まれていないので副作用はほとんどありませんし、大人も子供も安心して使うことが出来ますよ。
ただ、ジュクジュクとした部分やただれのひどい部分、ひどい傷などには使うことが出来ません。あくまで軽い症状の時に使うことを心がけてください。
とびひの薬の正しい塗り方とポイント
とびひの際は、薬の塗り方や保護の仕方にもいくつかポイントがあります。具体的には、以下のような手順で薬を塗るようにしてください。
- 石鹸を使って患部を綺麗に洗う
- 水分をタオルでふき取る
- 塗り薬を患部にしっかりと塗る
- ガーゼとテープを使って患部を覆う
- 必要に応じて包帯を軽く巻いて固定する
塗り薬を塗る時のポイント
基本的には、患部を清潔にした上で薬を患部に直接塗り、軽くガーゼを貼るという形になります。
特に注意しておきたいのは、皮膚を清潔にしておくという点ですね。皮膚が汚れたまま薬を塗ってしまうと、薬の効果が薄くなってしまいがちなので注意しておきましょう。
また、薬を塗る際は、綿棒などで薬をすくって塗るのがおすすめです。直接手で塗ってしまうと、手に菌が付着してしまいますし、手もベタベタになってしまいますからね。
あとは、子供などがガーゼを取ってしまうのであれば、軽く包帯を巻いておくと良いでしょう。通気性を損なわないよう、薄く軽めに巻いておくのがコツですね。
顔に塗り薬を塗る場合
もし、顔(鼻や目の周り)に薬を塗る場合は、ガーゼで覆うことが困難かと思いますので、無理にガーゼを貼る必要はありません。
ガーゼはあくまで引っ掻いてしまわないための対策なので、手にミトンをつけるなど、別の対策でカバーすれば良いでしょう。
また、薬によっては顔や目の周りに使えないものもありますので、使う前に説明書などをよく確認しておくようにしてくださいね。
薬はいつまで続けたら良い?
塗り薬は、とびひに感染した患部が完全に乾くまで続けるようにしましょう。かさぶたが出来るタイプであれば、完全にかさぶたになるまで続けてください。
ただ、塗り薬は止めても、飲み薬は続ける必要があります。見た目は治っていたとしても、皮膚の中に細菌が潜んでいることがありますからね。
とびひがぶり返さないよう、渡された分の抗生物質は全て使い切るようにしましょう。
また、飲み薬が無くなった場合も、必ずもう一度病院を受診するようにしてください。
薬を続ける必要があるかどうかを判断する必要がありますので、自己判断で治療を終わらせないように気を付けましょう。
まとめ
今回お伝えしたように、とびひに効く処方薬や市販薬には色々な種類がありますが、必ず効果の出る薬というものは存在しません。
これは、細菌がどの抗生物質に耐性を持っているのか、病院でもすぐには分からないためですね。
耐性のある薬を使っていると、とびひが良くならない、むしろ悪化するということが多いので、3日続けても効果が出ない場合には、病院の再受診を心がけるようにしましょう。
また、とびひの治療については、『とびひの治療期間は大人と子供で違う?早く完治させる方法は?』でも詳しくご紹介していますので、この記事と合わせて確認してみてくださいね。