アデノウイルスは、よく幼児や小学生などの子供の間で流行する「咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ:プール熱)」や「流行性角結膜炎(りゅうこうせいかくけつまくえん:はやり目)」の原因となるウイルスです。
しかし、実は大人でもアデノウイルスに感染することがあるのはご存知でしたか?
今回は、そんなアデノウイルス感染症に大人がかかった場合の症状や治療方法について解説していきたいと思います。
感染した場合に仕事は出勤停止になるのか?潜伏期間や感染経路はどうなのか?対処法、予防法なども含め、詳しくまとめてみました。
アデノウイルスは大人にもうつる?
アデノウイルスは「咽頭結膜熱(プール熱)」がプールで感染するイメージから、大人にはうつらないと思っている方が多いですが、そんなことはありません。
アデノウイルスもウイルスですから、いわゆる風邪やインフルエンザと同じで、くしゃみや咳などで大人にもうつります。
しかもアデノウイルスの感染力はインフルエンザに次ぐほど強いと言われており、子供の看病をしていたら親にうつったということも珍しくありません。
実際、大人が感染するケースでは、子供から感染しているパターンが圧倒的に多いと考えられています。
さらに付け加えると、大人のアデノウイルス感染症は症状の個人差が強く、ひどい時には子供より重い症状になりがちです。
そのため、特に免疫力の弱い高齢者の方が自宅にいる場合は注意が必要ですね。
アデノウイルスの潜伏期間は?
アデノウイルスの潜伏期間は、一般的に感染してから5~7日と言われています。
潜伏期間というのは、ウイルスが体に侵入してから実際に症状が現れるまでの期間のことで、いわゆるウイルスは持っているけど発症していないという状態ですね。
アデノウイルスは潜伏期間が比較的長く、例えば子供から感染した場合は、子供が治る頃になってようやく親が発症するような形になります。
また、アデノウイルス感染症の症状自体は発症から3~7日程度で治まりますが、症状が出ている・出ていないに関わらず、発症から2週間程度は他人にうつる可能性があります。
そのため、感染の予防対策は発症から2週間は続ける必要があると言えますね。
アデノウイルスの感染経路は?
アデノウイルスの感染経路は、大きく分けると以下の3つに分けられます。
- 飛沫感染(くしゃみや咳で飛ばされたウイルスを吸うことで感染)
- 接触感染(感染した人の粘膜や唾液などに触れることで感染)
- 経口感染(感染した人の食べ残しや糞便を触った手などから口に入ることで感染)
大人の場合は子供からうつるケースがほとんどで、一般的なくしゃみや咳からの感染以外にも、唾液や目やにを触って感染するというパターンもあります。
冬場に流行するノロウイルスのように排泄物からも感染するので、赤ちゃんや幼児のオムツを取り換える時に感染することも多いですね。
また、先ほどお伝えしたようにアデノウイルスは感染力も非常に強いため、例えば机などに付着したウイルスが10日以上経っても感染力を持ったままということもあります。
こういった点から、アデノウイルスの家族間の感染には十分注意しておきたいですね。
アデノウイルス感染症の大人の症状は?
大人のアデノウイルスの症状は、子供に比べると個人差が強く、個人の免疫力に左右されるところが大きいとされています。
これは、一口に大人と言っても年齢や生活環境、食事、運動量などで個人の免疫力に大きく差が出るためですね。
大人によく現れる症状は子供と大差はなく、主に以下の3つを特徴としています。
- 高熱(38~40度前後で3~7日)
- 結膜炎(目やにや目の充血など)
- 咽頭炎(喉の痛みや腫れなど)
感染する部位や人によって出る症状は異なり、3つ全ての症状が出る場合もあれば、どれか1つだけの症状が出るということもあります。
免疫力次第で高熱にならず微熱になることもありますし、同じ喉の痛みでも症状が軽いということもよくありますね。
また、これらの特徴的な3つの症状に加えて、風邪の時に現れるような咳や鼻水、腹痛、下痢、嘔吐、倦怠感、食欲低下、関節痛、筋肉痛といった症状が合わせて出てくることが多いです。
ちなみに、アデノウイルスにはインフルエンザのように多くの型があり、種類によって目の症状が強かったり、胃腸炎のような下痢・嘔吐・腹痛が強かったりと、症状の出方が変わってきます。
中でも気を付けておきたいのが流行性結膜炎(はやり目)と肺炎、そして出血性膀胱炎(しゅっけつせいぼうこうえん)を引き起こすタイプですね。
流行性結膜炎と肺炎はどちらも症状がひどくなることが多く、場合によっては入院や手術が必要なほどの重症になることがあります。
出血性膀胱炎については、見るからに真っ赤な血尿が出て痛みも出るため驚いてしまいますが、症状自体は数日で治まることがほとんです。
ただ、膀胱炎が長引くと腹痛やむくみなどの症状が現れて悪化することもありますし、他の病気だった場合にリスクが高いので、こちらも注意しておきたいですね。
アデノウイルスに感染したら仕事は出勤停止?
アデノウイルスは、子供の場合には登校・登園に出席停止期間が決められていますが、大人の場合には特にそういった法律上の出勤制限はありません。
ただ、症状がひどい場合には無理をせず休んだ方が良いかと思います。
多少の症状では休めないという方もいるかと思いますが、結果的に悪化してしまっては余計に迷惑をかけるだけですし、周りの人にもうつしてしまいかねません。
もし症状が軽くて出勤するという場合も、アデノウイルスは感染力が非常に高いウイルスなので、感染予防には注意をしましょう。
インフルエンザなどと同様、マスクの着用や手洗い・うがいをしっかりと行うと良いですね。
アデノウイルスの治療方法や対処法は?
アデノウイルスの治療期間は、人にもよりますがおよそ3~7日程度です。
多くの場合、熱が下がると同時に他の症状も落ち着いていくような形になるかと思います。
ただ、アデノウイルスには特効薬がなく、明確な治療方法は存在しません。そのため、症状を和らげつつ落ち着くのを待つ対症療法が中心となります。
つまり、風邪などと同じで自分の免疫力に任せた治療ということですね。
こういった特徴から、基本的には以下のような対処を行っていきましょう。
病院に行く
大人のアデノウイルスはここまでにお伝えした通り、軽い症状であればさほど問題にならない病気なのですが、逆に重症化した場合にはかなりリスクのある病気と言えます。
そのため、まずは症状がひどくなる前に病院を受診することが大切です。
医師の診察を受けておくことで病気の経過を把握しておいてもらえますし、症状を抑える薬なども合わせて処方してもらえますよ。
また、病院を受診しておけば、医師の診断の元で仕事を休むことも可能なので、「なんとなく休みづらい…」という人には良いきっかけにもなるかと思います。
自宅でしっかりと療養する
当たり前のことのように思われるかもしれませんが、免疫力を上げるために一番効果のある方法はこの自宅療養です。
アデノウイルス感染症は免疫力が弱っていると重症化しやすいですし、治るまでの期間も長引いてしまいがちです。
自宅でじっとしているのは申し訳ないと感じるかもしれませんが、重症化したり長引いたりしてしまったらそれこそ迷惑をかけてしまいますから、しっかりと休ませてもらいましょう。
栄養をしっかりと摂る
これも当たり前と思われがちですが、意外と体が辛い時というのは、大して食事を食べていないものです。
特に一人暮らしをしている場合、面倒だからとなんとなく食べずに過ごしてしまうことがあるので要注意ですね。
食事の内容としては、消化が良く栄養のとれるものがおすすめです。
うどんやにゅうめん、おかゆなどをベースに、しょうがやはちみつ、豆腐、ねぎなどの症状に効果的な食材を入れた食べ物がベストですね。
水分をしっかりと補給する
高熱が出ている時というのは、あなたの思っている以上に脱水が進行しているものです。
特に下痢や嘔吐がひどい場合、脱水症状には十分に注意をする必要がありますので、出来るだけこまめに水分補給を行うようにしましょう。
水分補給におすすめの飲み物は、脱水の時に足りていないミネラルや糖分を適度に補ってくれる経口補水液です。
大抵はドラッグストアや薬局に売っているので、買い求めておくと良いでしょう。
高熱で動けないといった場合には、通販などもおすすめです。
アデノウイルスの予防法は?
大人がアデノウイルスを予防する場合、ほとんどは家族からの感染なので、自宅で感染しない工夫が必要になります。
まず大前提として、子供の看病をする際にむやみに接触しすぎるのは、感染のリスクが上がってしまうため良くありません。
子供のことを思うと辛いところですが、ここはぐっと我慢して必要以上の接触を避けるようにしましょう。
次に、子供が触ったものについては、トイレも含め全て消毒を行うようにしましょう。
アデノウイルスは普通のアルコール類だと消毒しきれませんので、次亜塩素酸ナトリウムかエタノールを使うのが効果的です。
消毒を忘れがちなドアノブや手すり、子供が使ったおもちゃなどもしっかりと消毒することが大切ですね。
また、タオルなどは全て別々のものを使うようにし、洗濯物なども分けて洗濯するようにしましょう。
オムツなどを交換した際には、手洗い・うがいをしっかりしておくことが大切です。
まとめ
大人のアデノウイルスは軽い症状で済むことも多いですが、甘く見ていると痛い目に合うことも多い病気です。
特に症状がひどい場合には重症化する危険がありますので、今回お伝えしたような治し方をしっかりと行い、早く治すように心がけましょう。
また、そもそも感染しないのが一番なので、家族にアデノウイルスの感染者がいる場合は、予防対策もしっかりと行っていきましょう。