「軽い傷や虫刺されだと思っていたら、どんどん症状がひどくなってきた…」
「最初は1か所だけだったのに、気が付いたら他の場所にも発疹や水ぶくれが…」
もし、このような症状が出ているのであれば、それは「とびひ」という病気かもしれません。
とびひは放置しているとなかなか治らない病気なので、初期症状の段階から早期治療を始めることが重要になります。
そこで今回は、とびひの初期症状や症状の経過、大人と子供の症状の違いなどについて、医療職の目線から分かりやすくまとめてみました。
とびひの正しい情報を分かりやすくお伝えしていきますので、この記事を最後まで読めば、とびひがどんな病気なのかが簡単に理解出来るでしょう。
とびひの2つの症状とは?
とびひという病気は、傷口に原因となる細菌が入ることで起こる感染症の1つです。
正式名称は「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と言うのですが、患部をひっかいた手で他の傷を触ると症状が飛び火することから、とびひと呼ばれています。
あなたも一度は、傷口にばい菌が入って赤く腫れたことがありませんか?とびひは、このような傷口に菌が入る病気の中でも、少したちの悪いタイプのものと考えておけば良いでしょう。
とびひの原因やなりやすい人については、『とびひに感染する原因は?大人と子供で原因が違う?』でお話していますので、気になる方は目を通しておきましょう。
そんなとびひには、原因となる菌(原因菌)が主に2種類あり、起こる症状も原因菌によって以下の2つに分けられています。
子供に多い水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)
水疱性膿痂疹と聞くと分かりにくいですが、簡単に言ってしまえば「傷口が水ぶくれ(水疱)になるとびひ」のことですね。
夏の時期に子供の間で流行する一般的なとびひで、すり傷や虫刺され、あせも、湿疹などをひっかくことで発症します。
人の鼻の中や皮膚に存在している「黄色ブドウ球菌」という常在菌が感染することで起こる症状ですね。
水疱性膿痂疹の症状
水疱性膿痂疹になった皮膚には、以下のような症状が現れます。
- 水ぶくれ(水疱)
- ジュクジュクした皮膚のただれ
- 強いかゆみ
水疱性膿痂疹の初期症状にして最大の特徴は、傷口に出来る水ぶくれとジュクジュクとした皮膚のただれですね。
水ぶくれが破れると皮膚がはがれたようになり、そこがジュクジュクとした状態になります。強いかゆみも伴うので、子供であればかきむしってしまうことも少なくありません。
ただ、かゆみがあるからと水ぶくれをかきむしってしまうと、ひっかいて傷が出来た部分からも黄色ブドウ球菌が感染して、とびひが広がっていきます。
かきむしった手で他の部分をひっかくと、そこにも症状が飛び火していきますので、場合によっては全身に症状が広がってしまうこともありますね。
大人に多い痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)
痂皮性膿痂疹は、簡単に言えば「傷口が赤く腫れて膿がたまり、破れると厚いかさぶたになるとびひ」ですね。
水ぶくれが破れてジュクジュクする代わりに、厚いかさぶたが出来るとびひと考えておけば良いでしょう。
どちらかと言うと大人に多い症状で、子供でお目にかかることはあまりありません。流行る季節なども特に決まっておらず、春から冬まで季節に関係なく発症するのも特徴です。
痂皮性膿痂疹の原因は「溶血性連鎖球菌(溶連菌)」という細菌です。こちらも黄色ブドウ球菌と同じように、元々体に存在する常在菌ですね。
痂皮性膿痂疹の症状
痂皮性膿痂疹になると、以下のような症状が現れます。
- 赤い腫れ
- 膿のたまった水ぶくれ
- 厚いかさぶた
- 発熱
- リンパの腫れ
- 喉の痛み
痂皮性膿痂疹の最大の特徴は、膿のたまった水ぶくれが破れた後が、黄色っぽい厚いかさぶたになることです。
水疱性のとびひに比べると、発熱やリンパの腫れ、傷口の腫れや痛みといった、炎症症状が強いのも特徴的ですね。
症状が重くなると、溶連菌が出す毒素で全身が真っ赤になってしまうこともあり、水疱性のとびひよりも全身の症状が出てきやすい病気と言えるでしょう。
正直、かさぶたを見ただけではとびひと判断するのは難しいので、徐々にかさぶたが増えていく時などに痂皮性膿痂疹を疑うようにしてください。
とびひが出やすい場所は?
とびひは全身どこにでも発症する可能性のある病気ではありますが、特に以下のような場所に出やすい傾向にあります。
- 唇の周り
- 鼻の周り
- 目の周り
- 手のひらや手の指、腕
- 足や膝周辺
とびひは傷口から菌が入って起こる病気なので、基本的には傷の出来やすい場所に発症しやすいと考えておくと良いでしょう。
つまり、普段から肌が出ていることの多い、顔や手足などに発症する可能性が高いというわけですね。
その他にも、頭皮やおしりをひっかく癖のある人は、よくかきむしる場所にも出来やすい傾向にあります。
大人と子供の症状に違いはある?
とびひの症状は、基本的には大人と子供で大きな違いはありません。
むしろ、子供に比べると免疫力が高い分、同じタイプのとびひであれば大人の方が軽い症状で済むケースも多いです。
ただ、大人はかさぶたが出来るタイプのとびひに感染することが多いので、水疱性のとびひが多い子供とは違う症状が現れやすい傾向にあります。
発熱や喉の痛み、体のだるさといった全身の症状が出ることも少なくないので、そういった意味では子供より症状が重くなりやすいと言えるでしょう。
とびひの症状の経過は?
とびひの症状は、多くの場合以下のように進んでいきます。
- 傷口が化膿して水ぶくれが出来る
- 水ぶくれが破れて皮がむける
- 水ぶくれが破れた場所がジュクジュクになる
- ジュクジュクが徐々に乾いて跡が残る
- 皮膚の跡がだんだん綺麗になっていく
適切な治療を行った場合でも、ジュクジュクが乾くまでには1週間ほどかかると考えておきましょう。
跡はほとんどの場合で自然に薄くなっていきますが、跡が完全に綺麗になるまでには数ヶ月以上かかることが多いです。
ちなみに、とびひが広がる可能性が高いのは、ジュクジュクが完全に乾くまでの期間ですね。
とびひの感染や予防については、『とびひは赤ちゃんや大人にうつる?お風呂やプールはいつから?』で詳しく解説していますので、合わせて読んでおくことをおすすめします。
とびひの重症化には要注意!
とびひは正しい治療を行えば治っていく病気ですが、症状が重症化したケースでは、まれに以下のような合併症が出てくることもありますので、一応注意をしておきましょう。
SSSS(ブドウ球菌性熱傷用皮膚症候群)
名前の通り、黄色ブドウ球菌が原因になる水疱性のとびひで起こる合併症です。
本来とびひでは、黄色ブドウ球菌が皮膚の表面に感染するだけなのですが、症状が悪化すると、まれに血液中から全身に感染が広がってしまう場合があります。これが「SSSS(ブドウ球菌性熱傷用皮膚症候群)」ですね。
症状としては、皮膚がやけどのように円形状に赤くただれてしまいます。いわゆるとびひが重症化したような見た目で、皮膚がシートのようにベロンとはがれるのが特徴ですね。
症状の進行が早いことが多く、特に新生児に発症すると重症化する危険性が高い合併症です。とびひの症状が明らかにひどければ、すぐに病院を受診するようにしましょう。
腎障害
腎障害は、溶連菌が原因となって起こるかさぶたタイプのとびひで、まれに起こる合併症です。
腎障害というのは、簡単に言えば腎臓が正常に働かなくなって、おしっこがうまく作れなくなる病気ですね。
見た目の症状としては、尿量が減る、まぶたや足のむくみが出る、赤色や褐色のおしっこ(血尿)が出ることが特徴です。
腎障害は子供に多い症状なので、もしかさぶたタイプのとびひでこのような症状が現れた場合には、すぐに病院に連れていくようにしましょう。
とびひの治療には薬を使う
とびひはあせもや湿疹などと違って、放っておくとどんどん広がる病気なので、基本的には自然治癒が難しい病気です。
放置していると「いつまで経っても治らない…」なんてことになりかねませんので、抗菌・殺菌の効果がある治療薬を使うのが一般的と言えるでしょう。
治療でよく使われる抗菌薬は、塗り薬と飲み薬の2種類ですね。塗り薬だけでは広がる症状を抑えきれないことが多いので、飲み薬も合わせて使う形となっています。
その他、症状を抑えるためにかゆみ止めや解熱剤、痛み止めなどを使うこともありますね。特に、子供がとびひをひっかいてしまう時には、かゆみ止めが処方されやすいかと思います。
とびひの治療で使われる治療薬については、『とびひに効く治療薬や市販薬まとめ!リンデロンは使えるの?』で詳しくお話していますので、合わせて読んでおくと良いでしょう。
まとめ
とびひには、水ぶくれが出来るタイプとかさぶたが出来るタイプがありますが、どちらも放置してしまうと症状がひどくなりがちなのが特徴です。
多くの場合、とびひに気づくのは症状が広がってきてからだと思います。一度広がってしまったとびひは、市販薬などではなかなか治しきれません。
とびひの治療薬は、病院でしか処方されていないものが多いので、症状が広がっている場合には迷わず皮膚科の病院を受診するようにしてください。
とびひの治し方や治療期間については、『とびひの治療期間は大人と子供で違う?早く完治させる方法は?』で詳しくご紹介していますので、合わせて参考にしてくださいね。
子供の保育園が気になる方は、『とびひで保育園は休みになる?登園許可はいつから出るの?』も読んでおくと良いでしょう。