アデノウイルスとは、主に子供を中心に流行する風邪のウイルスの一種です。
子供なら乳児・幼児問わず、何度も感染することがあるので、子を持つ親としては何度もお目にかかるウイルスの1つですね。
今回は、そんな幼児・子供のアデノウイルス感染症の症状や対処法について詳しくお話していきたいと思います。
アデノウイルスが引き起こす病気にはどんなものがあるのか?保育園や幼稚園の登園はいつからしてもいいのか?アデノウイルスを予防するにはどうすれば良いのか?なども含め、あなたの気になる情報を徹底的にまとめてみました。
なお、子供ではなく大人のアデノウイルス感染症の症状や対処法を知りたい方は、『アデノウイルスの大人の症状!感染したら仕事は出勤停止?』の記事をご覧ください。
アデノウイルスの子供の症状は?
子供のアデノウイルスは、アデノウイルス自体の型や感染する部位によって色々な症状を引き起こしますが、基本的には3つの症状を特徴としています。
■高熱
38~40℃ほどの高熱である場合が多く、発熱は通常だと3~5日程度続きます。普通の風邪より明らかに熱が続く期間が長いのが特徴で、幼児や免疫力の低い子供の場合、1週間以上発熱が続く場合もあります。
■咽頭炎(いんとうえん)
喉の痛みと喉の腫れを中心とした症状です。痛みや腫れの程度によっては、声が出にくい、食べ物や飲み物が喉を通りにくいといった症状も合わせて出る場合があります。
■結膜炎(けつまくえん)
ひどい充血や目やにが特徴で、まぶたの裏や白目の部分が真っ赤になることもあります。また、まぶたや目の周りが腫れることもあります。
これらの症状以外にも、咳やくしゃみ、鼻水、下痢、嘔吐、腹痛、倦怠感、関節痛、食欲が出ないなど、風邪の時に起こるような症状も現れるので、一見すると風邪がひどくなったかのようにも見えるのも特徴的ですね。
また、アデノウイルスにはインフルエンザウイルスのように様々な型があり、一度かかっても繰り返しかかりやすいという特徴があります。
特に幼児や子供の時には免疫力が十分でないことから症状が現れやすく、よくお目にかかるウイルスと言えますね。
アデノウイルスが原因となる病気は?
アデノウイルスには実に50種類以上もの型が発見されており、その型によって発症する病気や症状が変わってきます。
咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)
咽頭結膜熱は、一般的に「プール熱」と呼ばれる、夏場の学校のプールなどでよく感染する夏風邪の一種です。
アデノウイルスが引き起こす病気の中でも最も多い症状と言われており、子供の病気としては「手足口病」や「ヘルパンギーナ」と合わせて注意したい病気ですね。
症状はまず急な高熱が起こり、それと同時か少し遅れて喉の症状と目の症状が起こるという流れになります。
38~40℃の高熱が3~7日、喉の痛みは強い痛みや腫れが3~5日程度続きます。目の症状は多くの場合、目の痛みやかゆみ、充血、目やになどが片側の目から始まり、その後両目に広がって3~5日続きます。
その他、下痢や嘔吐、腹痛、頭痛といった症状が起こる場合もあり、これらも他の症状と同じく3~5日程度は続くと考えておきましょう。
流行性角結膜炎(りゅうこうせいかくけつまくえん)
流行性角結膜炎は別名「はやり目」と呼ばれる、その名の通り感染が広がりやすい病気です。
プール熱とよく似た目の症状が出るのが特徴で、感染すると結膜(白目)が充血し、目やにや涙が大量に出るようになります。
程度によってはまぶたの裏まで真っ赤になり、目やにがひどいと目を開けるのも大変になる程ですね。
また、先に説明したプール熱は目の症状に加えて高熱や喉の痛みを伴いますが、はやり目の場合は熱がさほど高熱にならず、目の症状がとても強く出るという特徴があります。
目の中にゴロゴロするような痛みが出ることもあり、喋ることの出来ない乳児や幼児は目をこすって訴えることが多いです。
その他、潜伏期間と治るまでの期間が長いのも特徴で、潜伏期間は5~2週間程度、治療期間は1~2週間程度が一般的ですね。
ただ、炎症がひどい場合やしっかりと休養がとれていない場合などでは、1ヶ月以上長引くこともありますので注意が必要です。
滲出性扁桃炎(しんしゅつせいへんとうえん)
アデノウイルスが喉の扁桃腺に感染した時に起こる病気で、プール熱・はやり目と合わせてアデノウイルスが原因でよく起こる疾患とされています。
症状はまず39~40℃の急な高熱が起こり、それに合わせて喉の痛みと扁桃腺の腫れを伴います。
発熱は大体の場合3~7日ほど続きますが、その割には子供が元気なことも多いので、注意して見てあげると良いでしょう。
また、滲出性扁桃炎の特徴として、扁桃腺に白いブツブツとした苔のようなものが現れます。
大抵の場合は白いブツブツが取れるまで熱が下がらないので、併せてチェックしておきましょう。
腸管アデノウイルス胃腸炎
アデノウイルスが口から侵入した場合に起こりやすい病気で、3歳未満(特に0歳)の乳幼児によく現れるのが特徴です。
症状は水のような下痢と腹痛を特徴として、微熱や嘔吐、喉の痛みなどを伴うことがあります。
他の感染性胃腸炎に比べると嘔吐の症状が比較的軽く、代わりに下痢が長く続くといった印象ですね。
症状が続く期間は人にもよりますが、下痢がおよそ1週間前後で、嘔吐や微熱はあったとしても数日で落ち着くことが多いです。
肺炎
アデノウイルスが肺に感染した時に起こり、5歳以下の乳児・幼児で発症することが多い病気です。
初期症状こそ風邪と同じですが、肺炎の場合はそれに続いてひどい咳、発熱、頭痛、息苦しさなどが現れるのが特徴です。
症状がひどい場合には、呼吸困難や顔色が悪くなるといったこともありますね。
また、肺炎が重症化した場合、脳炎や髄膜炎などの命に関わる合併症を引き起こす危険もありますので注意が必要です。
治療期間は症状の程度や個人の免疫力に左右されますが、重症化しなかった場合は通常1~2週間程度で治まります。
その他の病気
その他、出血性膀胱炎(しゅっけつせいぼうこうえん)や皮膚の湿疹・発疹などが現れる場合もあります。
出血性膀胱炎は真っ赤な血尿が出るのが特徴で、排尿する際に痛みが現れるため、言葉が話せない子供は泣いてしまうことが多いです。
多くの場合は数日で治りますが、他の病気の場合や悪化した場合のリスクが高いので、出来るだけすぐに病院に連れていった方が良いでしょう。
皮膚の湿疹・発疹については、熱が下がる際などに現れることが多く、アデノウイルスが直接の原因とは限りません。
子供の場合まだ免疫が完成しておらず、体調を崩した際に湿疹や蕁麻疹が現れる時もありますので、一度病院で医師の診察を受けた方が良いかと思います。
※関連記事 『子供の蕁麻疹が出る原因と対処法!治らない場合はどうする?』
アデノウイルスの流行する時期は?
アデノウイルスは、基本的に高温多湿の環境で活発になりやすいウイルスで、最も流行する時期は春~夏と考えられています。
特に夏と言えばプール熱が流行る時期でもあるので、大体5~7月あたりに最盛期を迎えるというイメージで良いでしょう。
ただ、あくまで春~夏に流行しやすいというだけで、アデノウイルス自体は1年中感染する可能性があります。
特に腸管アデノウイルス胃腸炎については、時期を問わずいつでも感染する可能性があるので、秋~冬に胃腸炎の症状が起こった場合にも注意しておきましょう。
アデノウイルスの感染経路や潜伏期間は?
アデノウイルスの感染経路としては、ウイルスに触ることで感染する「接触感染」、くしゃみ・咳などの飛沫で感染する「飛沫感染」、便の中のウイルスを吸い込むことで起こる「糞口感染」などがありますが、中でも特に多いのが接触感染です。
子供の場合は特にプールの水を経由して接触感染することが多く、これが主な感染経路と言えますね。
他にも、感染者と同じタオルで体を拭いたり、感染者が触ったドアノブに付着したウイルスに触れて感染するというケースも多いです。
また、乳幼児などはまだ免疫力が十分でなく、くしゃみや咳などから簡単に感染してしまいますので、特に注意しておきたいですね。
潜伏期間については、アデノウイルスの型や発症する病気によって多少異なるものの、5~7日程度と言われています。
また、発症する頃から他人に感染するようになり、発症から2週間は他の子供や他人に感染させてしまう可能性があるので、手洗い・うがい、マスク着用などの対策が必要ですね。
保育園にはいつから登園していいの?
まず、基本的にアデノウイルスが原因のどの病気・症状であっても、しっかりと治るまでの間は登園・登校を避けましょう。
下手に動くと悪化する可能性が高まりますし、他の人にうつす可能性も高くなってしまいます。
アデノウイルスの症状の中には、悪化すると危険なものも多く含まれていますので、まずは治るまでむやみに動かないことを基本として考えましょう。
また、保育園や幼稚園、学校などへの登園・登校は、病気によって文部科学省より制限されているものがあります。
今回出てきた病気の中だと、以下の2つですね。
- 咽頭結膜熱(プール熱):症状が消えたのを確認した後、2日間は出席停止
- 流行性角結膜炎(はやり目):医師の診断で感染の可能性が無くなったと判断されるまで出席停止
どちらも感染が流行する可能性が高いため制限されていますので、必ず出席停止期間を守るようにしましょう。
子供がアデノウイルスに感染した時の対処法は?
アデノウイルスには特効薬が存在しないため、治療は症状を緩和しつつ免疫力で治るのを待つ「対症療法」が中心となります。
高熱が出ていれば解熱剤を使い、炎症による喉や目の痛みがあるのであれば鎮痛剤を使うといった具合ですね。
あとは、免疫力を高めて自然治癒に任せる形になります。
こういった点を考慮して、子供には以下のような対処法を行っていきましょう。
かかりつけの病院を受診する
アデノウイルスは、特に5歳以下の乳幼児の場合、免疫力が完全ではなく重症化する可能性が高いです。
そのため、症状がひどくならないうちに病院を受診することで、重症化のリスクを出来るだけ抑えるようにしましょう。
ただ、軽い症状の時点でアデノウイルスかどうかを判断することは困難ですので、「普通の風邪かな?」と思っても早めに受診することが大切ですね。
なお、症状がひどいケースでは、医師の監視下で様子を見るために一時的に入院になるケースもあります。
しっかり休ませて栄養を摂らせる
自然治癒で治していくためには、免疫力をとにかく高めることが大切になります。
そのためにも、まずはしっかりと安静にさせて、栄養のある食事を摂らせるようにしましょう。
病気の時というのは胃腸が弱っている可能性が高いので、消化に良いおかゆやスープ、うどんなどが良いですね。
喉の痛みや腫れがひどい様子であれば、ゼリー、プリン、すりおろしりんごといった、のど越しが良く食べやすいものが良いですね。
また、母乳を与えている赤ちゃんの場合は、嘔吐がなければ授乳をしても問題ありません。嘔吐しそうな場合には、授乳の時間や量を抑えつつ、徐々に戻すような形で進めていきましょう。
ミルクを与えている赤ちゃんの場合も同様に、嘔吐がなければ通常通り、嘔吐があれば落ち着いた後に濃度と量を1/2程度から始める形ですね。
なお、嘔吐がある場合や食べられない場合などは、病院で医師に話をすれば栄養を摂るための点滴をうってもらえますので、出来るだけ早く相談するようにしましょう。
脱水症状に注意する
赤ちゃんや幼児は、大人に比べてすぐに脱水症状を起こしてしまいがちです。
特に発熱、下痢、嘔吐といった症状がある場合には、脱水症状を起こす危険性が高いですので、意識的に水分補給をさせるようにしましょう。
子供の水分補給におすすめの飲み物は、電解質と糖質をバランスよく含んだ経口補水液(けいこうほすいえき)です。
近所のドラッグストア、もしくは通販などでも購入が可能ですので、常備しておくとなお良いですね。
また、まだ母乳を与えている乳幼児の場合は、経口補水液ではなく基本的に母乳を継続するようにしましょう。
ただ、脱水が続いている場合に限っては、その都度スプーンなどで経口補水液を与えた方が良いですね。
なお、子供に飲ませる量としては、基本的には欲しいだけ飲ませてあげれば問題ありません。
あまりにも飲まない場合や嘔吐がひどい場合には、医者と相談して点滴を行ってもらうようにしましょう。
重症化のサインに気を付ける
子供のアデノウイルス感染症は重症化しやすいものが多く、5歳未満の乳幼児の場合は特に注意が必要です。
対処が遅れると重症化に繋がりますので、自宅で看病をする際には特に以下の6つの状態に注意をしてください。
- 高熱が何日も続く
- 水分をほとんど摂らない
- ぐったりとして元気がない
- 嘔吐を何度も繰り返す
- 呼吸が息苦しそうだったり、変な音がする
- 一部、もしくは全身のけいれんが5分以上続く
アデノウイルスの症状が出ている時にこのような状態になったら重症化のサインです。急いで病院に連絡して指示を仰ぐようにしましょう。
アデノウイルスの感染を予防するには?
アデノウイルスは非常に感染力の強いウイルスですが、手洗い・うがいは効果的です。そのため、まず子供には手洗い・うがいを徹底させるようにしましょう。
また、プール熱などの場合はプールの水を経由して目にウイルスが侵入するので、プールに入った後よく目を洗うことや、目を触ったりこすらないことも大切になります。
そして、もし家族の誰かが感染してしまった場合には、他の家族に感染が広がらないことを第一に考えましょう。
- 出来るだけ余計な接触は避ける
- タオルや洗面器は分けて使う
- 洗濯物も別にして洗う
- お風呂に入れる場合は一番最後にする
- おむつ交換の後は手洗い・うがいをする
- ドアノブやおもちゃなど触った部分は次亜塩素酸ナトリウム、もしくはエタノールで消毒する
こういった対処をしっかりと行っていくことで、他の家族への感染を防ぐことができますよ。
まとめ
子供のアデノウイルス感染症は見た目も辛そうなことが多く、親にとっては本当に心配ですし辛いですよね。
どうすれば良いものかと悩んだ場合には、まずかかりつけ医を受診して診断してもらい、現状を理解した上で対処していくようにしましょう。
また、乳幼児や子供がアデノウイルスにかかった場合、重症化を避けることが大切になります。
特に5歳未満の乳児・幼児の場合は重症化しやすいので、今回お伝えした対処法をしっかりと実践して、リスクを回避するようにしていきましょう。